文字は殺し、精神は生かす
馬鹿か利口かけじめのつかないようなブログ 「日本人よ、共和国創設のために今一歩の努力を!」 このブログは道徳教育粉砕運動を応援しています
2008年6月28日土曜日
ボランティアの功罪
何となく批判めいたことを云ってしまったけれども、私はボランティア精神そのものはいいものだと思うのです。ただあまりにボランティアのいいところばかりが強調される部分があるので、あえてその問題について触れておきたいと思います。 私が云う「プチブルの自己満足」というのは言い方は悪いですけど、こういうことを云っています。たとえばプチブルがしている仕事は自己実現に貢献していないと考えます。生活に困らないだけのお金をこの仕事から獲得しています。それでもどうしても自己実現の面で不満が残るとします。そうすると、このひとが余暇を利用してボランティア活動に参加し、そこで自己実現を図ります。ここには何も悪いことはないように思われます。実際私もあえてプチブルという悪いことばを使ってはいますが、その精神そのものを批判しようというつもりはありません。 それでもこれが問題である場合がありえます。それはボランティアに参加するひとの善意そのものではなく、副次的なものです。たとえば今多くの地方公共自治体などにおいて、観光ガイドがボランティアの手にまかされています。ここでだれも不満をもつものがいないのならどこが問題なのか、そもそも予算がかけられないのだから、ボランティアにやってもらうしかないし、これでいいではないか、という考え方もできます。しかし他方では、たとえ人件費が100%赤字であろうと、学芸員を雇うべきではないか、雇わないとしても、尐なくともこういう仕事に対して、お客からのお礼という形ではなくて、自治体ないし何らかの団体が対価を支払うべきではないかという考え方もあります。ただここで「ここに
は予算はかけられないのです」ということが自明の理のように云われてしまう。しかしこれは本当に自明の理なのでしょうか。 ボランティアは、その精神そのものにおいてとりわけ責められるべきものではないのだけれども、もしかしたら彼らの存在が「金にならない文教予算を削る」根拠を強めているのではないかという危惧を感じるのです。「ここはボランティアにおまかせして」ということになって予算が削られるということがあるのではないか。 善良なボランティアのことを(確かに揶揄はしていますけど)特に悪く云うつもりはありません(ちょっとくどい)。それでももう尐しこういう問題に関して自覚的であってもいいのではないかと思います。ただ問題は、もしボランティアがやらなかったら、ボランティアにまかされているところは回収できないという前提が既に存在しているのではないかということなのです。今やボランティアがいなくなったら放置されてそれで終わりということもありうるのではないか。最悪の場合は人件費が100%赤字になるとしても守っていかなければならないものがある、という議論を全否定する前提がもう出来上がってしまっているのではないか、というところがいちばん気になります。で、だから結局ボランティアにやってもらうしかない、ということになるかどうか、ということなんだけれどね。ここのところを考え直してみたらどうか、ということを云っているわけです。 前の記事はたくさんアクセスがあるだろうなんてちっとも思っていなかったので、「エコエコ有閑階級」なんて云っておちゃらけててごめんです。 前の記事 奴隷ボランティア 次の記事 私も世代論をやってみるよ
投稿者 NEIMUROYA 時刻: 9:13
ラベル: 社会
3 コメント:
sixaplusoneo さんのコメント...
> エコエコ有閑階級
私は言い得て妙と感じました。 フワッとした感じがよく出ていると思います。
2008年6月29日19:07
NeiMuroya さんのコメント...
コメントどうもありがとうございます。ふだんはあまりアクセスがないので、いつもどおりのひとりごとみたいな記事に突然アクセスがたくさんあって驚いてしまいました。すると何だかこういう表現が恥ずかしいような気がしたのです。もしよかったらこれからものぞいてやってください。
2008年6月30日1:15
Windy day J さんのコメント...
こんにちは、はじめまして、 読んでいて分かったことがありますので、書いておきます。 こうして、NeiMuroyaさんが、ブログを書いていることが、まさに、ボランティアなんだろうなと。
2009年3月19日22:08
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「ひとが言ったことを聞いて、それはそのとおりだと主張するのは、狂気と虚栄心のきわみである。」サド
「文字は殺し、精神は生かす」 この聖パウロのことばを引いて、ヴォルテールは直訳よりも意訳がすぐれていることを説き、ルソーは身分や地位にとらわれることなく個人の資質を重視すべきだということを主張しました。
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